英語学習コミュニティの読書会で指定された一冊。
買ったのは早かったのに、正直なところ、なかなか読み始められずにいました。
「ちゃんと腰を据えて読みたいな」
「でも今はちょっと余裕がないかも」
そんなふうに本棚に置いたまま、時間だけが過ぎていきました。
ところが、読書会の数日前。ふとスイッチが入り、読み始めてみると——
ページをめくる手が、止まらなくなったのです。
今回読んだのは、
赤ちゃんは世界をどう学んでいくのか
という一冊です。
さらに読書会での対話を通して、「なるほど」「そういう見方があったのか」という新しい視点をたくさんいただき、この本は“読んで終わり”ではなく、“考え続けたくなる本”になりました。
この本を手に取ったきっかけ
この本を読むことになったきっかけは、中村麻里先生主宰のMELEP の読書会で扱われていたからです。
一人で読んでいたら見落としてしまいそうな部分も、読書会で言葉にし、他の方の視点を聞くことで、理解が何層にも重なっていく。
「本を読む → 話す → 見え方が変わる」そんな学びの循環を、今回も強く感じました。
質問力という視点
私がこの本を読んで、真っ先に心に残ったのは、「質問力こそが、子どもを伸ばす鍵なのではないか」ということでした。
赤ちゃんは決して受け身の存在ではなく、
「これは何だろう?」
「どうしてこうなるんだろう?」
と、世界に問いを投げかけながら学んでいます。
ここで大切なのは、私たち親や教育者が、どんな問いを子どもに投げかけているかだと感じました。
単に「できた?」「わかった?」といったYES/NOで終わる問いではなく、
「どう思った?」
「なんでそう考えたの?」
といったWHの問いを立てることで、子どもは自分で考え、言葉にしようとします。
こうした問いかけには、会話が続きやすくなり、子どもの言葉を自然に引き出しやすくなるという効果があります。実際に、疑問文で語りかけることが、子どもの語彙を増やすことにつながるという研究結果も紹介されており、とても納得感がありました。
読書会での対話を通して、「質問する」「問いを持つ」という行為は、特別な指導法ではなく、日常の関わりの中でこそ力を発揮するものなのだと、改めて実感しました。学びの出発点は、教えることよりも、子どもが考え始めるきっかけになる問いを投げかけることなのかもしれません。
ロボットという存在
次に私の印象に残ったのは、ロボットの役割についてです。
これまで私にとってロボットは、「知識を教えてくれる存在」でした。
けれど本書では、こちらが知識を確認したり、教えたりする相手としてロボットを捉え直します。
その関係性の中で、学習は一気に主体的なものになり、
「相手がわかってくれた」という体験を通して、自己効力感が育っていく。
ロボットの話でありながら、「教える・教えられる関係」そのものを見直すきっかけになり、日々のレッスンでの自分の立ち位置を考え直す、まさに目から鱗の視点でした。
絵本と想像力、そして語彙の広がり
絵本の章も、とても印象的でした。
絵本は、物語や表現の豊かさだけでなく、日常会話よりも多様な言葉に出会えるという点にも大きな意味があります。
普段の生活ではなかなか触れない表現に出会うことで、語彙の幅が自然と広がっていく。
この指摘には、とても納得感がありました。
また、「絵」が想像力に与える影響についても考えさせられました。アニメ調の絵よりも絵画調の絵の方がその後の活動での想像性に影響があった、との研究は大変興味深かったです。
また、「読み聞かせや音読、暗唱で終わらせるのはもったいない」という読書会での言葉とも重なり、絵本の力をどう引き出すかを、これからのレッスンでも意識していきたいと感じました。
絵本知識診断
少し余談ですが、本書の中に紹介されていた「絵本知識診断」というものを家族でやってみました。
面白かったのは、娘が0歳の頃に読み聞かせていた絵本を、本人はまったく覚えていなかったこと笑でも私は、「きっと彼女の細胞は覚えている」と思っています。
覚えていなくても、無駄じゃない。そう思えたこと自体が、大きな気づきでした。この診断をきっかけに、0歳の頃に読んでいた絵本を、夜に一緒に読み返す時間も生まれました。
成長とともに、絵本が形を変えて戻ってくる。こうした“リサイクル”のような関わり方ができるのも、絵本の魅力だと感じています。
目の効用と、対話によって深まった理解
「目の効用」については、読書会での対話を通して理解がさらに深まりました。
文化的背景や宗教との関係といった視点が加わることで、自分一人では辿り着けなかった解釈に出会い、学びが立体的になっていく感覚がありました。本を読むだけでは得られなかった気づきが、対話によって育っていく。これこそが、学びの場に仲間がいる価値なのだと感じました。
今後のレッスンへのつながり
この本と読書会を通して得た一番の収穫は、「これから子どもたちと、どんな問いを共有していきたいか」を改めて考えられたことです。
教える内容を増やすこと以上に、
どんな問いを投げかけるか、
どんなやり取りを大切にするか。
その積み重ねが、学びの質を大きく変えていく。
今後のレッスンでは、子どもたちの中にすでにある「考える力」や「問いを持つ力」を、より丁寧に引き出していきたい。そんな新しい視点をもらえた一冊でした。
この本が気になっている方にとって、読む・読まないの判断材料というよりも、日々の子育てや学びの関わりを見直す、ひとつのきっかけになれば嬉しいです。
投稿者プロフィール
-
英語指導歴20年以上/英検1級/元高校英語教員
長崎県諫早市の英語教室「narynglish」主宰 吉田恵子(Nary/ナリ)
【学歴・職歴】
• 大学在学中 カリフォルニア州立大学フレズノ校へ1年間交換留学
• 2000年 長崎県公立高校教諭として採用
• 2008年 早稲田大学大学院教育学研究科 修士課程修了
• 2023年 公立高校教諭を退職後、narynglishを起業
一人ひとりの「わからない」を大切に、「つまづき」を飛躍のチャンスに変える英語レッスン。
実践的な英語力に加え、自分で考える力・継続力・非認知能力を英語を通して育みます。
中学生、高校生が将来にわたって英語を使いこなせるよう、英検対策・定期テスト・留学準備を土台から支援。
「安心して取り組める」「前向きになれる」と評判で、naryとまた学びたい!と言ってもらえる英語教室です。レッスン方法は、対面・オンライン・ハイブリッドの形式から選べます。
最新の投稿
英語おすすめ本2025年12月26日子どもの学びを見る、新たな視点を与えてくれた一冊
英語レッスン、イベント2025年12月23日英語ニュースで考える力を育てる|JR九州×マリオのレッスンプラン
英語レッスン、イベント2025年12月16日これからの軸 わたしの軸|Vision Board Review
お知らせ2025年12月11日初めての英語発表会 | Narynglish Harvest 2026








コメント