英語で書かれた話を原文で読みたい、だけどなんて書いてあるかわからない・・・そんな人たちにオススメなのが日本語に「翻訳された」本。
それぞれの「翻訳」には訳者の捉え方が反映されていて、その訳されたお話を並べて読むのもなかなか面白いのです。今回は翻訳の違いを楽しみながら英語学習ができる例を「The Giving Tree」という日本の英語の教科書にも載ったことのある本を使ってご紹介します。
The Giving Tree 「おおきな木」とは?
The Giving Tree 邦題「大きな木」
作者Shel Silverstein シェル・シルヴァスタイン
本の表紙を見て、懐かしく感じる人もいるのではないでしょうか?
1964年にアメリカで出版、現在47の言語に翻訳され、2,000万冊以上売れているとか。作家のシルヴァスタインは児童作家であると同時にソングライターでもあり、グラミー賞を2度受賞したり、ゴールデングローブ賞やアカデミー賞にもノミネートされたりしています。
この出版にあたり作者のシルヴァスタインはなかなか大変だったようです。ある出版社からは「この話は子どもには悲しすぎるし大人には単純すぎる」と言われたり・・・。挿絵に関しても、描きなおしにあっていたようです。
もし私が本の内容を簡潔に表すならば、「リンゴの木と少年の愛 ~少年の成長を通じて~」というタイトルをつけてしまいそうです。
実はこの本、「児童文学の中で最も賛否両論が分かれる本のひとつ」と評されています。というのも、主人公(少年と同名の木)の関係を肯定的に解釈すべきか(木が少年に無私の愛を与えるなど)、否定的に解釈すべきか(少年と木が虐待関係にあるなど)、どちらにも捉えられるからです。だからこそ、教育の場で扱うのには大変意味のある作品であるともいえます。
「おおきな木」2人の翻訳家
この絵本は、1976年に本田錦一郎さんによって翻訳されたものが篠崎書林より発売され、2010年に村上春樹さん訳の新訂版があすなろ書房より発売されています。どちらの翻訳も大変わかりやすく絵本ならではのリズム・テンポもステキです。オススメなのは、おふたりそれぞれの翻訳のThe Giving treeを2冊並べて読み比べること。
ちなみに、私はハルキストとまではいきませんが、村上春樹さんの作品は好きです。大学生の頃は感化され、好んだ飲み物はジャックダニエルだったほど笑
だけど、今回の翻訳に関しては本田錦一郎さんの作品の方が私好みでした。
“but not really.”あなたならどう訳す?
私が本田さんの翻訳の方が好みだと決定打となったのは、ここの翻訳。ちなみにみなさんなら次の英文をどう訳しますか?
物語の流れがなくては翻訳できないですよね?
男の子と一緒に成長してきた木は、男の子と一緒にいられると嬉しかった。“The tree was happy.”年を重ねて男の子が遠い場所に行って帰ってきて会えても“The tree was happy.”男の子が木からリンゴや枝を持って行っても“The tree was happy.”ついには幹を持っていき船で出て行ってしまっても“The tree was happy.”
その次に出てきたのが上の写真。“but not relly.”
村上春樹さん 「幸せに・・・なんてなれませんよね」
本田錦一郎さん 「ほんとかな。」
もちろん、英語の直訳的には村上さんの訳の方がしっくりきます。あくまで私見ですが、本田さんの方はこの本のテーマ「愛」に対する本田さんの想いがこの短い言葉にあふれているように感じます。
このように、翻訳のちがいをみることでどんな英文だったかな?自分ならどう表すかな?と学習のきっかけになることもあります。ぜひみなさんも”The Giving Tree”を手に取り、お話の流れの中でこの”but not really.”の箇所を考えてみてください。
The Giving Treeを英語の授業で活用
このお話、英語の教科書にも掲載されたことのある作品です。よって、授業に取り入れることも簡単です♪私が以前おこなった高校3年生への授業例を1つ紹介。
1. 英語で読み聞かせをおこなう(必要であれば要所要所解説しながら) 2. "but not really"でストップ。子どもたちに意味を考えてもらう 3. 本田さん、村上さんの例を提示。 4. 続きを英語で読み聞かせる。 5. 生徒たちお互いに感想を共有する。 6. 「年老いた母から娘への手紙」を共有する 7. あなたが"Tree"ならばどのように対応するだろうか。 (可能なら仮定法を用いて表現させる))
6. に紹介している「年老いた母から娘への手紙」は以前他校に勤務する先生に教えていただいたもの。レッスンの流れもその先生からのアドバイスを参考に組み立てました。Lessonをおこなった当時Youtubeにも動画が上がっており、それを用いて授業をおこないました。
「愛」という壮大なテーマを扱うので、成熟した、社会に出る目前の高校3年生に向けて行いました。みんな真剣に取り組んでくれ、レッスン後に個別にいろいろな話をした生徒もいました。
絵本は決して子ども向けに作られたものばかりではありません。しかも、英語を学ぶ上で大事な「リズム」を意識されて作られているものが多く、英語学習との相性は抜群!です。
そうそう、この絵本の読み聞かせをした後、裏表紙を見せるとなぜか生徒たち笑い出します。だってそれは…
この作者の顔写真!このfull beard manが”The Giving Tree”を書いていたことに少なからず衝撃をおぼえる生徒がいるようです笑
赤ちゃんや子供たち、学生たちはもちろん、大人の学びなおしにもnarynligshのレッスンでは、ご希望があれば絵本をどんどん活用します♪長崎 諫早英語教室 narynglishお気軽にお問い合わせください。
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