真っ白な解答用紙を見たことがあります。
分からなかった問題だけではありません。
「間違ったら嫌だから、書かない。」
そんな気持ちから、本当は何か書けそうな問題まで空欄になっていました。
無答と誤答は、同じじゃない
私はその子に、「無答」と「誤答」の話をしました。
空欄のまま出すのは「無答」。
何かを書いて、それが間違っていたら「誤答」。
どちらも正解ではないけれど、
どちらの方が、「ここまで考えました」が伝わると思う?
「間違ってもいいから書こう。何も書かなかったら、試合放棄と同じ。せめて記号問題だけでも書こう。」
そんな話をしました。
しばらくして、またその子の解答用紙を見る機会がありました。
すると、以前より空欄が減っていました。
点数が一気に何十点も上がった。
そんな華々しい話ではありません。
でも、
「間違うくらいなら書かない」から、
「間違うかもしれないけど、書いてみよう」へ。
私には、その変化がとても大きく見えました。
点数になる前に、育っているものがある。
長崎県諫早市で英語教室narynglishをしながら中高生と関わっていると、そんな瞬間に出会うことがあります。
中高生の成長は、いつも分かりやすいわけではない
narynglishに通っている中高生は、英語が得意な子ばかりではありません。
まだ将来やりたいことが見つからない子。
学校生活について悩む時期を過ごす子。
思うようにテストの点数が取れず、「平均点は取りたいんだけどなぁ」と話す子。
途中で進路を考え直す子もいます。
もちろん、英語教室ですから、英語力はしっかり伸ばしたい。
テストの点数も上がってほしいし、英検にも合格してほしい。
以前、「中学英語ってどう勉強する?私の答えはこの3つ」という記事でも書きましたが、英語は「分かる」だけではなく、実際に使いながら身につけていくこと、そして学び続けられる力を育てていくことを大切にしています。
だからって、学力を伸ばすことを曖昧にしたいわけではありません。
ただ、中高生と長く関わっていると、テストの点数や英検の合否として結果が表れる前に、その子の中で何かが少しずつ動き始めることがあります。
「間違うのが嫌だから書かない」から、「間違っても書いてみよう」へ。
「やらなきゃいけない」から、「これならやってみよう」へ。
そんな小さな変化は、すぐには数字には表れないかもしれません。
でも私は、そこにも学びの大切な一歩があると思っています。
「やらない」の一言だけでは分からない
学校から出された課題には、ほとんど手をつけない。
ところが、narynglishから出した課題には、すぐに取り組む。
そんなレッスン生もいます。
最初は私も、
「どうしてだろう?」
と考えました。
もちろん、「学校の課題だからやらない」「narynglishの課題だからやる」と単純に分けられる話ではないと思っています。
マンツーマンのレッスンでは、その子が今どこまで分かっているのか、何につまずいているのかを見ながら課題を考えます。
そして、できるだけ本人にも選んでもらいます。
「今日は、こっちとこっちならどちらをやってみる?」

難しすぎる課題を一方的に渡されるのと、
「これならできそう」
と思えるものを自分で選ぶのとでは、少し違うのかもしれません。
課題を全部やらせることだけが目的ではなく、
自分で「これをやってみよう」と決める経験を積むこと。
それも、学習の大切な一部だと思っています。
英語の外にいる、その子を見る
先日、保護者の方から、部活動の試合で頑張っている写真を送っていただきました。
そこに添えられていたのが、
「試合の顔も少し変わってきました」
「笑顔も出てきました」
という言葉でした。
以前から、その子にとって「自分を表現すること」が一つの課題であることは、保護者の方とも共有していました。
だからこそ、その言葉と写真を見たとき、
「あぁ、変わってきたんだなぁ」
と、その成長を保護者の方と一緒に喜べたことが、まずとても嬉しかったんです。
そして私には、もう一つ嬉しいことがありました。
私がその子と関われるのは、基本的には英語を学ぶ時間です。
レッスンで頑張っている姿は知ってる。
つまずいたときの表情も、分かったときの表情も知ってる。
でも、部活動で仲間と過ごしている姿や、英語とはまったく違う場所で夢中になっている姿は、普段のレッスンからは見えません。
だから、写真の中の笑顔を見たとき、
「こんな表情をするんだ!」
と、なんだかとても嬉しくなりました。
英語のことだけではなく、その子の成長そのものを、保護者の方と一緒に見守らせてもらえている。
それって、とても幸せなことだなと思います。
そして、写真を見ながら、もう一つ。
「英語でも、こんな表情が見たいな」
とも思いました。
英語が、その子の一番得意なものにならなくてもいい。
でも、英語を学ぶ時間も、その子が少しずつ自分を出したり、自分の良さに気づいたりできる場所にはできる。
英語の外で見せてくれたその表情を知ったからこそ、そんな時間をもっと作っていきたいと思いました。
だから、保護者とも「小さな変化」を共有したい
中高生になると、保護者の方が子どもの学習の様子を直接見る機会は、少しずつ減っていきます。
マンツーマン指導では、私自身の備忘録も兼ねて、Google Documentで「学習報告」を共有しています。
今日は何を勉強したか。
どこにつまずいていたか。
ということだけではなく、
「こんなことができるようになりました」
「今日はここが嬉しかったです」
といった、小さな変化もできるだけ残すようにしています。
うまくいかなかったことだけではなく、
今どこで頑張っているのか。
何が少し変わったのか。
それを、保護者の方と一緒に見つけていける関係でありたいと思っています。
英語だけを見ていると、その子の一部分しか見えない
「勉強をしない子」
「点数が取れない子」
「やる気がない子」
表面的な結果だけを見ると、そんな言葉で説明できてしまうことがあります。
でも、その子には、
部活で頑張っている姿があったり、
友達といるときに見せる表情があったり、
自分なりに将来のことを考えている時間があったりします。
学習についても、
「何もしていない」のではなく、
難しすぎて動けないこともあれば、
間違うのが怖くて手が止まることもある。
自分で決められれば動けることもあります。
だから私は、英語だけを見るのではなく、
その子が今、どんな状態にいるのか
をできるだけ見たいと思っています。
私が育てたい「目に見えない力」
テストの点数は大切です。
英検の合格も、大きな成果です。
数字として表れる結果は、本人の自信にもつながります。
だから、「点数より大切なものがある」と言って、学力を軽く考えたいわけではありません。
ただ、その結果につながる前に育っているものがあります。
間違っても、やってみること。
自分にできることを見つけること。
自分で選ぶこと。
できなかった自分だけではなく、できるようになった自分にも気づくこと。
私は、こうしたものを「目に見えない力」と呼んで、大切にしています。
これは、学校教育で大切にされている「学びに向かう力、人間性等」とも重なる部分があるように思います。
文部科学省は「学びに向かう力、人間性等」を、子どもたちが社会や世界とどう関わり、よりよい人生を送っていくかに関わる力として位置づけています。
そこには、主体的に学習に取り組むことだけでなく、自分の特徴に気づき、よいところを伸ばしていくことや、自分の学び方を振り返り、次につなげていくことなども含まれています。
→ 文部科学省「学びに向かう力、人間性等を育成する教育の充実」
こうした力は、テストの点数のようにはっきり数字には表れません。
でも、
「間違うかもしれないけど、書いてみた」
「今日はこれをやる、と自分で決めた」
そんな小さな経験の積み重ねが、やがて自分で考え、自分で選ぶ力につながっていくのではないかと思っています。
だから私は、英語力を伸ばすことと同時に、英語を学ぶ過程で育っていく「目に見えない力」も大切にしていきたいと思っています。
その先で、自分の良さに気づいてほしい
私が中高生に最終的になってほしい姿は、
「英語ができる人」
だけではありません。
自分の良さに気づき、自分の生き方を自分で決められる人。
自分は何が好きなのか。
何が得意なのか。
何を大切にしたいのか。
それが少しずつ分かってくると、
進路を選ぶときも、
仕事を選ぶときも、
人生のさまざまな場面でも、
「みんながそうしているから」だけではなく、
自分なりの選択ができるようになるのではないかと思っています。
そして、そのために英語ができることの一つが、「自分のことを、自分の言葉で伝える」経験を増やすことだと思っています。
narynglishでは、教室の外の人たちと英語でつながる国際交流にも取り組んでいます。
以前、「長崎から台湾へ。英語でつながる交流会」でも紹介しましたが、そこでも大切にしているのは、完璧な英語を話すことだけではありません。
「私はこれが好き」
「私の住んでいるところには、こんなものがあるよ」
「あなたのことをもっと知りたい」
自分のことを伝え、相手のことを知ろうとする。
そのために、今持っている英語を使ってみる。
そんな経験もまた、自分のことを知り、自分を表現する一歩になると思っています。
だから私は、英語を「正しく答えるための教科」だけではなく、自分の世界を少しずつ広げていくためのことばとして使ってほしい。
そして、そんな力は、特別な経験の中だけで育つものではないのかもしれません。
空欄だったところに、答えを書いてみたこと。
「今日はこれをやる」と、自分で課題を一つ選んだこと。
今まで見せなかった自分を、少しずつ表現できるようになったこと。
一つひとつは、すぐには数字に表れない小さな変化です。
それでも、その一歩一歩が、
「自分にもできる」
「自分で選んでいい」
という感覚につながっていく。
そしていつか、
自分の良さに気づき、自分の生き方を自分で決める力につながっていく。
私はそう信じています。
長崎県諫早市の小さな英語教室で、
そんな点数になる前の変化と、
その先に育っていく「目に見えない力」を、
これからも大切に見つけていきたいと思っています。
投稿者プロフィール
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英語指導歴20年以上/英検1級/元高校英語教員
長崎県諫早市の英語教室「narynglish」主宰 吉田恵子(Nary/ナリ)
【学歴・職歴】
• 大学在学中 カリフォルニア州立大学フレズノ校へ1年間交換留学
• 2000年 長崎県公立高校教諭として採用
• 2008年 早稲田大学大学院教育学研究科 修士課程修了
• 2023年 公立高校教諭を退職後、narynglishを起業
一人ひとりの「わからない」を大切に、「つまづき」を飛躍のチャンスに変える英語レッスン。
実践的な英語力に加え、自分で考える力・継続力・非認知能力を英語を通して育みます。
中学生、高校生が将来にわたって英語を使いこなせるよう、英検対策・定期テスト・留学準備を土台から支援。
「安心して取り組める」「前向きになれる」と評判で、naryとまた学びたい!と言ってもらえる英語教室です。レッスン方法は、対面・オンライン・ハイブリッドの形式から選べます。
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