夏の終わりが近づき、少しずつ秋の気配を感じるようになりました。
秋といえば、読書の秋。
そこで今回は、この夏に読んだ本の中から、特に心に残った3冊をご紹介します。最後には、この夏、英語教師として読んだ、英語教育に関する一冊も加えました。
はじめに紹介する3冊は、子どもや若い世代に向けて書かれているように見えます。しかし、読み進めながら何度も、「これは、今の私たち大人にも必要な言葉ではないだろうか」と感じました。
年齢に関係なく、
「今いる場所に、とどまったままでいいのかな」
「これまでと同じ見方や考え方のままで、本当にいいのかな」
そんな問いを心のどこかに持っている人に、手に取ってほしい本です。
『ある晴れた夏の朝』―一つの視点にとどまらない
1冊目は、小手鞠るいさんの『ある晴れた夏の朝』です。
アメリカの高校生8人が、広島・長崎への原爆投下の是非について、肯定派と否定派に分かれてディベートを行う物語です。
この本は、学習仲間から紹介してもらいました。
私が読んだのは7月下旬。ちょうど、原爆投下の日や終戦記念日を前に、戦争や平和に関する報道が増え始める時期でした。
毎年夏になると、長崎で暮らす私にとって、平和について考える機会が自然と増えていきます。
しかし今年は、この本を読んだことで、一つの出来事を一つの視点だけで見ないことを、例年以上に意識できたように思います。
自分とは異なる立場に立つ人は、なぜそう考えるのか。その意見の背景には、どのような歴史や経験があるのか。
異なる意見に触れることは、自分の考えを手放すことではありません。相手の背景を知り、自分の考えを別の角度から見直すことにもつながります。
英語の授業でも、私は学習者に自分の意見を伝えてほしいと思っています。しかし、意見を持つことと同じくらい大切なのが、自分とは異なる考えに耳を傾けることです。
この本は、平和について考えると同時に、「対話するとはどういうことか」を考えさせてくれた一冊でした。
『「どうせ無理」と思っている君へ』―自分で決めた限界にとどまらない
2冊目は、植松努さんの『「どうせ無理」と思っている君へ――本当の自信の増やしかた』です。
こちらも、学習仲間から紹介してもらいました。
彼女はこの夏、植松さんと一緒にロケットを飛ばすイベントを開催し、その「ロケットプロジェクト」について教えてもらったことが、本との出会いにつながりました。
この本を読みながら何度も感じたのは、「私たちには、可能性しかないのかもしれない」ということです。
私たちは時に、挑戦する前から「自分には無理だ」と決めてしまいがちです。
年齢、経験、環境、過去の失敗。できない理由を探そうと思えば、いくらでも見つかります。
けれど、本当に無理かどうかは、やってみなければ分かりません。
昨日までできなかったことに挑戦する。失敗したら、その原因を考える。そして、別の方法を試してみる。
その積み重ねによって、「できなかったことが、少しできるようになった」という実感が生まれます。それが、誰かと比べて得るものではない、内側から湧き上がる自信につながっていくのだと思います。
特に心に残ったのは、植松さんが本当の自信の先にあるものを「優しさ」だと伝えていることでした。
最初は、なぜ自信が優しさにつながるのだろう、とわかりませんでした。
考えながら読み返していくうちに、自分の失敗を受け入れられる人は、他者の失敗も受け入れられること、自分の可能性を信じられる人は、他者の可能性を否定する必要がないことに気づきました。そうなると、自分を大きく見せるために、誰かを小さくする必要もなくなります。
本当の自信とは、人より上に立つためのものではなく、挑戦している誰かに「大丈夫」と言える力なのかもしれません。
英語教育に置き換えるなら、間違えた学習者をすぐに評価するのではなく、その挑戦を受け止めること。そして、今できないことだけを見て、その人の可能性を決めつけないこと。
相手の可能性を奪わず、次の挑戦を支えることも、教育における優しさなのだと思います。
子どもの小さな成功体験や、大人がその可能性を信じて見守ることについては、以前書いた「子育て・教育にエビデンスを―5つの気づきから見えた学びの力」でも考えています。
『ミライの授業』―今日の選択から未来をつくる
3冊目は、瀧本哲史さんの『ミライの授業』です。
この本との出会いは偶然でした。古本屋でたまたま手に取り、そのまま読み始めました。
読み進めることが楽しい!それなのに、終わりが近づくにつれて、読み終わってしまうのが惜しい! 私にとって、そんな一冊でした。
この本は、未来を生きる14歳に向けた特別講義をまとめたものです。しかし、最後には、14歳だけでなく、中高年になった今の私たちにもまっすぐ届くメッセージがありました。
人生は一度しかありません。
けれど、これまでの人生がどうであったとしても、今日という日を境に、自分の生き方を変えることはできます。
誰もが社会を大きく変える「変革者」になる必要はありません。それでも、理想とする自分に近づけるかどうかは、今日の自分が何を知り、どう考え、何を選ぶかにかかっています。
また、自分の可能性を信じることは、何もかも一人で成し遂げることではありません。
自分だけではできないことがあると認め、周りの人を信じて頼る。誰かの力を借りながら、自分も誰かにできることを差し出す。
これからを生きる私たちに、未来をつくるための考え方を、分かりやすい言葉で届けてくれる一冊でした。
英語教師として読んだ『英語授業の理論と実践ガイドブック』
最後に、英語教育に携わる者として、この夏に外すことのできなかった一冊を番外編として紹介します。
『英語教育』2026年8月増刊号の『英語授業の理論と実践ガイドブック』です。
私は日頃から、現場で積み重ねた経験だけでも、研究から得た理論だけでも、よりよい英語授業をつくるには十分ではないと感じています。
経験があるからこそ分かることは、確かにあります。一方で、経験を重ねるほど、自分にとって慣れた方法を無意識に選び続けてしまうこともあります。
最新の研究や、それを取り入れた授業実践に触れることは、自分の授業を違う角度から見直す機会になります。
「なぜ、私はこの活動を取り入れているのか」
「目の前の学習者にとって、本当に必要な支援になっているのか」
「これまで効果があった方法を、今回も同じように使ってよいのか」
理論は、現場の学習者を置き去りにして使うものではありません。しかし、現場で起きていることを理論と照らし合わせることで、経験だけでは説明できなかったことが見えてくることがあります。
理論と実践を行き来しながら、自分の英語授業を振り返る。
この一冊は、私にとって、自分の実践を見つめ直し、普段のレッスンプランを補強するよい機会になりました。
英語教育の理論や他の教育者の実践を、自分の授業を振り返るためにどう活用するかについては、「生徒のためだけじゃない!英語教師にこそ読んでほしい2冊」でも、おすすめの本とともに紹介しています。
今の自分に、とどまらないために
今回紹介した本は、扱っているテーマも、出会い方も異なります。
けれど、どの本からも共通して、
「今の自分が見ている世界だけで、本当にいいのか」
「今いる場所に、とどまったままでいいのか」
という問いを受け取ったように思います。
一つの見方だけにとどまらず、異なる立場から考えてみる。
自分で決めた限界にとどまらず、まずは挑戦してみる。
過去の自分にとどまらず、今日の選択から未来をつくる。
そして英語教師として、自分の経験だけにとどまらず、理論や他者の実践と照らし合わせながら授業を更新していく。
世界の見方も、自分の可能性も、これからの生き方も、今日、何を知り、どう考え、何を選ぶかによって少しずつ変えていくことができます。
そして、自分の可能性を信じられる人は、きっと、他者の可能性も信じることができる。
英語教育に携わる一人として、私自身も、目の前の学習者の可能性を簡単に決めつけることなく、学び続けたいと思います。
同じように、日々の授業について考え続けている英語教師の方々とも、これから少しずつ学びや実践を共有していけたら嬉しいです。
みなさんにとっても、この秋、今の自分に新しい問いを届けてくれる一冊との出会いがありますように。
投稿者プロフィール
-
英語指導歴20年以上/英検1級/元高校英語教員
長崎県諫早市の英語教室「narynglish」主宰 吉田恵子(Nary/ナリ)
【学歴・職歴】
• 大学在学中 カリフォルニア州立大学フレズノ校へ1年間交換留学
• 2000年 長崎県公立高校教諭として採用
• 2008年 早稲田大学大学院教育学研究科 修士課程修了
• 2023年 公立高校教諭を退職後、narynglishを起業
一人ひとりの「わからない」を大切に、「つまづき」を飛躍のチャンスに変える英語レッスン。
実践的な英語力に加え、自分で考える力・継続力・非認知能力を英語を通して育みます。
中学生、高校生が将来にわたって英語を使いこなせるよう、英検対策・定期テスト・留学準備を土台から支援。
「安心して取り組める」「前向きになれる」と評判で、naryとまた学びたい!と言ってもらえる英語教室です。レッスン方法は、対面・オンライン・ハイブリッドの形式から選べます。
最新の投稿
英語おすすめ本2026年8月29日英語教師の読書記録|今の自分にとどまらないために
英語学習方法2026年8月12日中高生に育てたい「目に見えない力」|諫早英語教室narynglish
英語レッスン、イベント2026年8月9日地域をこえてつながるから、地元長崎を知る
英語教室ナリィングリッシュ講師紹介2026年7月15日20年教えても学び続ける理由








コメント